守備が上手くなると、攻撃も変わる?|8月の振り返りと9月のトレーニング
LEAL CORASON 稲城の8月のテーマは「守備」。ところが1か月取り組む中で、子どもたちに起きた大きな変化のひとつは、意外にも「攻撃」でした。8月の成長を振り返りながら、9月に取り組むテーマをご紹介します。
LEAL CORASON(レアルコラソン)稲城では、小学生年代の子どもたちを対象に、毎月テーマを決めてサッカーのトレーニングを行っています。8月のテーマは「守備」でした。
「守備」と聞くと、「相手からボールを奪う練習」を思い浮かべる方が多いかもしれません。ところが1か月取り組む中で、子どもたちのプレーには、守備だけでなく「攻撃」にも変化が見られました。
この記事では、8月のトレーニングを振り返りながら、実際にどんなプレーの変化が見られたのか、そしてそこから見えてきた課題をもとに、9月に何へ取り組んでいくのかをご紹介します。
8月のテーマは「守備」|1対1で意識した3つのこと
8月は、少年サッカーでよく起こる1対1の守備(相手1人に対して自分1人で守る場面)を中心に、次の3つに取り組みました。
① 相手との距離
目安は、大きく一歩踏み込めば相手のボールに触れられるくらいの距離です。ここまで入ると、「隙があればいつでも奪えるぞ」という圧(プレッシャー)を相手にかけられます。
② 相手の動きに対応できる構え方
反復横跳びをするときのような姿勢を意識します(スポーツでは「パワーポジション」と呼びます)。左右どちらにもすぐ動けて、力みすぎない構えです。ただし体格や動きには個人差があるので、一人ひとりに合わせて微調整していきます。
③ ボールを奪うタイミング
足を伸ばせば、相手より先にボールへ触れられる——その瞬間が奪いどきです。特に、相手の足からボールが離れた瞬間がねらい目になります。ただし、これは最後は感覚で身につけていくもの。一度でかわされてしまう子もいますが、それを否定はしません。どの間合い・どのタイミングで奪いにいくのが「自分にとってベストか」を、一緒に見つけていきます。
守備に取り組むと、攻撃にも変化が見られました
興味深いのは、守備に取り組む中で、攻撃のプレーにも変化が見られたことです。守る側が簡単に抜かれなくなると、攻める側はドリブルだけで突破するのが難しくなります。
実際に8月のゲームでは、1人で仕掛けるだけでなく、仲間を使ってパスで相手を崩そうとする場面が増えてきました。ドリブルとパス、どちらも選べる——攻撃の選択肢が広がってきたのです。
図解 1
攻撃の選択肢が広がる
ボールを持ったとき、選べるように
自分で仕掛ける
相手が下がっていれば、ドリブルで突破を狙う
仲間を使う
抜くのが難しければ、パスで相手を崩す
私たちが大切にしているのは、こうしてプレーの選択肢が広がっていくことです。「このプレーをしなさい」と一つの答えを覚えるのではなく、相手の様子を見ながら、自分たちで攻め方を選べるようになってほしいと考えています。
守備と攻撃はつながっています
- 1. 守備の質が上がる
- 2. 攻める側にも、新しい判断や工夫が必要になる
- 3. ドリブルに加えて、パスや仲間の動きを使う選択肢も生まれる
守備が良くなると、攻撃にも工夫が求められる。サッカーでは、このように守備と攻撃が互いに影響し合いながら、プレーの幅が広がっていきます。
8月に見られた変化|攻守の「切り替え」の意識が芽生えてきました
もうひとつ、8月に少しずつ見られるようになったのが、攻守の切り替え(攻撃と守備が入れかわること)に対する意識です。これには2つの方向があります。
図解 2
攻守の切り替え|芽生えてきた2つの意識
守備 → 攻撃
ボールを奪ったら、止まらずゴールへ向かおうとする
攻撃 → 守備
攻めているときも「取られたら」を考えて守備に備える
ひとつは、守備から攻撃へ移ろうとする意識です。ボールを奪った後に立ち止まらず、「よし、攻撃だ」とゴールへ向かおうとする姿が増えてきました。
もうひとつは、攻撃しながら守備にも備える意識です。自分たちが攻めているときも、「もし取られたら」を頭の片隅に置いて、味方が守備の準備をしたり、カバーの位置を意識したり——そんな場面が少しずつ見られるようになってきました。
どちらも、ボールが動く前から次のプレーに備える意識です(こうした準備を「セット」と呼びます)。まだ芽生え始めたばかりですが、この意識が育つほど、攻守の切り替えはよりスムーズになっていきます。
なぜ「守備」の月にシュート練習もたくさんしたの?
8月は守備がテーマでしたが、シュート練習もたくさん行いました。「守備の月なら、守備だけを練習した方がいいのでは?」と思われるかもしれません。
でも私たちは、守備だけを切り離して練習することはしません。サッカーは、ゴールを奪い合うゲームだからです。相手のゴールにシュートを打って得点することは、勝敗に直結する、サッカーで最も大切なプレーのひとつです。
だからこそ、テーマが守備の月でも、ゴールを目指す攻撃の技術はいつも一緒に取り組みます。守ることと攻めることは、ひとつのゲームの中でつながっているからです。
図解 3
サッカーは、攻守がひとつのゲーム
ひとつのゲームの中に、両方がある
攻撃
ゴールを奪う(シュートで得点する)
守備
ボールを奪う(相手の攻撃を止める)
もうひとつ大切にしているのが、「サッカーは点を取るスポーツだ」という本質を子どもたち自身に理解してもらうことです。この考えが少しずつ根づくと、どんな場面でも「ゴールを奪う・点を取る」という一番の目的から逆算して、いま自分は何をすべきかを考え、判断できるようになっていく——私たちはそう考えています。
実際に、シュート練習を重ねると「早くシュートを打ちたい」という気持ちが強くなります。おもしろいのは、その気持ちが守備にも表れることです。「早くボールを奪って、自分たちの攻撃にしたい」という意識が高まり、特に相手ゴールの近くで、より強く・粘り強くボールを奪いにいこうとする場面が見られるようになりました。
「決められた練習をこなす」だけでなく、ゴールを目指す楽しさも大切にする——これは、LEAL CORASON が大切にしている指導の考え方がよく表れた部分です。
今後の課題|守備の「3つのポイント」を感覚に落とし込む
8月のトレーニングを通して、次の課題も見えてきました。それは、8月に取り組んだ守備の3つのポイント(相手との距離・構え方・奪うタイミング)を、もっと「感覚」に落とし込んでいくことです。
いまの子どもたちは、「頭で考えながら」できるようになってきた段階です。次のフェーズは、いちいち考えなくても体が自然に反応して「感覚」でできるようになること。ここを目指していきます。
そこで9月は、考えてできるようになってきた子には、コーチが「こうしなさい」という答えをあえて減らします。代わりに、問いかけで、子ども自身が考えて振り返るきっかけをつくります。たとえば、間合いに課題のある子には、こんなふうに問いかけます。
コーチはこう問いかけます
- ・今、相手との距離はどうだった? 近すぎた? 遠すぎた?
- ・この相手なら、どのくらいの距離がよさそう?
答えを教えてもらって直すのではなく、問いかけをきっかけに自分で気づいて調整できるようになること。それが、3つのポイントを「感覚」にしていく近道だと考えています。
9月のトレーニングテーマ
8月に見られたプレーの変化と、そこから見えた課題を踏まえて、9月は守備と攻撃をそれぞれ次のステップへ進めます。
9月の守備|個人の技術を磨き、グループ戦術へ
前章の課題——8月に学んだ守備の3つのポイント(相手との距離・構え方・奪うタイミング)を「感覚」に落とし込むこと。9月の守備は、まずこの一人ひとりの守備技術を、さらに磨き上げていきます。
そのうえで、個人の技術から一段レベルを上げ、「グループでの守備戦術」を新しく導入します。1対1で守るだけでなく、味方と協力してチームで守る——その第一歩です。
特に大切にするのが、ボールを奪いに行っていない選手の「立ち位置」です。守備というと、ボールにいく選手だけに目が行きがちですが、実はボールに直接関わっていない選手がどこに立つかで、チームの守りやすさは大きく変わります。抜かれたときに備えてカバーできる位置に立つ、相手のパスコース(パスの通り道)を消す位置に立つ——こうした「ボールを持っていない選手の役割」を、少しずつ理解していきます。
攻撃|2人組の戦術を知り、使ってみる
攻撃の9月のテーマは、「2人組のグループ戦術」を理解することです。8月に守備の質が上がったぶん、攻撃も1人の力だけでなく、仲間との連係で崩す工夫が必要になってきました。
とはいえ9月は、こうした戦術を完璧に使いこなす段階ではありません。「こういう攻撃方法があるんだ」→「やってみよう」→「実際のプレーで使ってみよう」という、いわば「知って、試してみる」フェーズです。
その代表的な例が「ワンツー」です。ワンツーは、次のように2人で協力して、相手をかわしたりゴールへ向かったりする方法です。
図解 4
2人で崩す例:ワンツー
- 1ボールを持った選手が、仲間へパスする
- 2パスを出した選手が、相手の背後やスペースへ動く
- 3走った先で、仲間からもう一度パスを受ける
ただし、9月はワンツーだけを練習するわけではありません。ワンツーを代表例にしながら、次のような「2人で相手を攻略するための基本的な考え方」を学んでいきます。
- 2人で、どう相手をかわすか
- パスを出したあと、どう動くか
- ボールを持っていない選手が、どう関わるか
- 2人で協力して、どうゴールへ向かうか
そして、こうした戦術を実際に使うには、「止める(トラップ)」「蹴る(パス)」といった基本技術が欠かせません。9月は、グループ戦術を学びながら、その土台になるトラップやパスの技術にも、引き続き取り組んでいきます。
動画で見る|8月のゴールシーンとMVPの声
こちらの動画は、8月のゲームで生まれたゴールシーンと、MVPに選ばれた選手のコメントをまとめたものです。奪ったらすぐゴールへ向かう、といった8月に取り組んだプレーが、実際のゴールにつながった場面もご覧いただけます。
プレーする子どもたちの表情や、MVPの選手が自分の言葉で話す様子も、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ|守備と攻撃を一緒に学ぶと、サッカーがもっと分かる
8月は、1対1の守備で「相手との距離・構え方・奪うタイミング」の3つに取り組みました。その中で、攻撃ではドリブルに加えてパスで崩す選択肢が広がり、守備から攻撃へ・攻撃から守備へと切り替える意識も、少しずつ芽生えてきました。
そこから見えてきた課題は、この3つのポイントを「頭で考える」段階から、「考えなくても体が動く」感覚へ落とし込んでいくことです。だから9月は、守備ではその中でも特に「間合い」を感覚にしていき、攻撃では2人組の戦術(ワンツーなど)を知って、実際に試していきます。もちろん、その土台になる「止める・蹴る」も引き続き大切にします。
私たち LEAL CORASON 稲城では、「このプレーをしなさい」と答えを覚えるだけでなく、子ども自身が相手や仲間を見て、考え、少しずつ自分で判断できるようになることを大切にしています。これからも一人ひとりの小さな変化を見逃さず、サッカーを楽しみながら成長できる環境をつくっていきます。
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李 成俊
LEAL CORASON FOOTBALL SCHOOL 稲城
