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コラム2026-06-07

003号 「考えなさい」では、子どもは考えられない。〜自分で考えて行動できる子を育てるために親とコーチができること〜

この記事で伝えたいこと

  • 1子どもが自分で考えるためには知識や経験という「材料」が必要
  • 2失敗は成長のきっかけになる
  • 3主体性を育てるにはティーチングとコーチングの両方が必要
  • 4家庭だけでなくサッカーという場でも主体性を育てられる

著者

李成俊コーチ

編集:見澤拓歩

「自分で考えて行動できる子になってほしい」

これは、多くの親御さんが子どもに願うことではないでしょうか。

勉強でも。
サッカーでも。
日々の生活でも。

言われたことをただこなすのではなく、自分で考え、自分で決めて、自分で行動できる人になってほしい。そう願う親御さんは多いと思います。

しかし現実には、

「宿題やったの?」

「準備したの?」

「忘れ物ない?」

と、つい口を出してしまうことがあります。

言わなければ動かない。

でも言い続けると、今度は言われないと動かなくなる。

では、どうすれば子どもは自分で考えて行動できるようになるのでしょうか。

01

自分で考えるためには、まず「材料」が必要

POINT

「考えなさい」と言うだけでは、子どもは考えられません。自分で考えるためには、まず考えるための知識や経験という「材料」が必要です。

最近は、「子どもに考えさせることが大切」と言われることが増えました。もちろん、それはとても大切なことです。

しかし、人は知らないことについて考えることはできません。

例えばサッカーで、「考えてプレーしよう」と言われても、考えるための知識や経験、原理原則がなければ考えることはできません。

勉強も同じです。解き方を知らない問題を、「自分で考えなさい」と言われても難しいでしょう。

つまり、自分で考えるためには、まず考えるための材料が必要なのです。

教育やスポーツの世界では、知識や技術、原理原則を伝えることを「ティーチング」と呼びます。

子どもたちが考えられるようになるためには、まず考えるための土台をつくる必要があります。

02

でも、教えただけでは考えられるようにならない

POINT

「理解すること」と「できるようになること」は別のプロセスです。子どもが同じミスを繰り返すのは、失敗ではなく成長の過程です。

ここで、多くの親御さんがぶつかる壁があります。それは、「教えたのにできない」という壁です。

何度も伝えている。本人も分かったと言っている。それなのに、また同じミスをする。

そんな経験はないでしょうか。

実は、これは珍しいことではありません。なぜなら、理解することと、できるようになることは別だからです。

例えば、「ボールを受ける前に周り(相手やスペース)を見ることが大切」という話を聞いた選手がいたとします。

話を聞いた瞬間は、「なるほど」と思います。しかし試合になると、ボールに夢中になってしまい、また周りが見えなくなる。そしてまたボールを失う。

これは失敗ではなく、成長の過程です。

私たち大人も同じです。

運動した方が良い。早く寝た方が良い。スマホを見過ぎない方が良い。そんなことは分かっています。それでもできないことがあります。

子どもたちも同じなのです。

03

学びが深まるのは、失敗した時

POINT

失敗は悪いことではありません。「なぜだろう?」という問いが生まれた瞬間に、学びは自分事になります。

では、どうすれば学びは定着するのでしょうか。

私たちは、学びが深まるきっかけの一つが失敗だと考えています。

例えば、コーチに「周りを見よう」と言われる。その時は理解したつもりになる。しかし試合ではボールに夢中になって、周りが見えずボールを奪われる。

悔しい。

そこで初めて、「なんで取られたんだろう?」という問いが生まれます。

この問いが生まれた瞬間に、学びは自分事になります。なぜなら、「もっと上手くなりたい」「次は失敗したくない」という、自分で考えたくなる理由が生まれるからです。

忘れ物も同じです。

何度も「前日に準備しなさい」と言われるより、実際に忘れて困った時の方が、「次はどうしよう」と考え始めます。

つまり、失敗によって、「なぜだろう?」「どうすれば良いんだろう?」という問いが生まれることが大切なのです。

04

失敗した時こそ、自分で考える力が育つ

POINT

失敗した時に答えを渡すのではなく、「何が起きたと思う?」と問いかけること。それがコーチングです。ティーチングとコーチングはどちらも子どもの成長に必要です。

ここで大切になるのが、大人の関わり方です。

失敗した時、私たちはつい答えを教えたくなります。

「だから言ったでしょ」「こうすれば良かったんだよ」と言いたくなることもあります。

しかし、それでは子どもが考える機会を奪ってしまうことがあります。

失敗した時こそ、「何が起きたと思う?」「どうしたら良かったと思う?」「次はどうしてみる?」と問いかけることが大切です。

教育やスポーツの世界では、こうした関わり方を「コーチング」と呼びます。

コーチングとは、単に答えを教えないことではありません。必要な知識や考え方を伝えた上で、子ども自身が自分なりの答えを見つけられるようにサポートすることです。

つまり、ティーチングとコーチングは対立するものではなく、どちらも子どもの成長に必要な関わり方なのです。

もちろん、最終的には大人が正しい方向へ導くこともあります。しかし大切なのは、答えを渡すことではなく、答えにたどり着くプロセスを経験してもらうことです。

05

自分で考えたくなる環境をつくる

POINT

心理学の「自己決定理論」によれば、自律性・有能感・関係性の3つが整った環境で、人は主体的に行動できるようになります。

では、こうした「自分で考えたい」「挑戦してみたい」という気持ちは、どのように生まれるのでしょうか。

ここまでお話ししてきた「自分で考えたくなる理由」については、心理学の研究でも説明されています。

心理学の世界では、人が主体的に行動する理由について多くの研究が行われています。その中でも有名なのが「自己決定理論」です。

この理論では、人が主体的に行動するためには、

・自律性
・有能感
・関係性

の3つが重要だとされています。

自律性

自律性とは、「自分で決めている」という感覚です。

だから私たちは、答えを与えるだけでなく、問いかけることを大切にしています。ティーチングとコーチングを、場面に応じて使い分けています。

有能感

「自分にもできる」「自分はやればできる」という感覚です。

だから私たちは、結果だけではなく成長を認めます。

「ゴールを決めた」だけではなく、「前より周りが見えるようになった」「前よりフォームが綺麗になった」そんな変化を大切にしています。

関係性

「ここなら挑戦しても大丈夫」という感覚です。

失敗した時に責められる環境では、人は挑戦できません。だから私たちは、失敗を責めるのではなく、挑戦そのものを認めることを大切にしています。そして失敗から学び、自分で考える経験を積み重ねてもらいたいと考えています。

06

一度理解しても、また同じミスをする

POINT

一度できたからといって、すぐに定着するわけではありません。子どもの成長は一直線ではなく、その過程に付き添うことが大切です。

自分で考えて行動できるようになるまでには、時間がかかります。一度理解したからといって、すぐにできるようになるわけではありません。

「周りを見ることが大切だ」と理解しても、次の試合ではまたボールに夢中になってしまうかもしれません。

「前日に準備しよう」と決めても、また忘れ物をしてしまうかもしれません。

それは決しておかしなことではありません。私たち大人も、分かっていてもできないことがあるからです。

だからこそ大切なのは、一度でできるようになることを求めるのではなく、失敗と挑戦を繰り返しながら少しずつ成長していく過程に付き添うことです。

子どもの成長は一直線ではありません。少し進んで、少し戻って、また前に進む。その繰り返しの中で、自分で考える力は少しずつ育っていくのだと思います。

07

……でも、それをご家庭だけで担うのは、とても大変です

POINT

「待つことが大切だ」と頭では分かっていても、ご家庭でそれを実践するのは現実的に難しいことがあります。それは親御さんの忍耐が足りないからではありません。

ここまで読んでくださって、こう感じた方もいるかもしれません。「言っていることは分かる。でも、それを毎日やるのは大変すぎる」その通りだと思います。

ここから先は、その「大変さ」について正直にお話ししたいと思います。

失敗から学ぶことが大切だと、頭では分かっている。それでも、いざ我が子が失敗しそうになると、つい口を出してしまう。

これは決して親御さんの忍耐が足りないからではありません。

実は、私自身()も一人の親です。子どもが失敗しそうになれば、つい先回りして口を出してしまうこともあります。「待つことが大切だ」と分かっていても、家の中ではなかなかそれができません。

朝は時間に追われ、夕方には次の予定があり、何より子どもの安全を守ることを最優先に考えてしまう。そうすると、どうしても「待つ」よりも「先に言う」を選んでしまうのです。

これは私だけの話ではないと思います。ご家庭には、それぞれの事情があるからです。

例えば朝の忙しい時間に、「ゲームをして身支度を始めないなら、遅刻して学べば良い」と見守る余裕は、なかなか持てないものです。

遅刻すれば困るのは子どもですが、その後の連絡や対応に追われるのは親御さんです。

さらに、親御さん自身も仕事や家事など、他にやらなければならないことがあります。その中で毎回じっくりと失敗を見守り、問いかけ、待つというのは、現実的にとても難しいことなのです。

08

だからこそ、サッカーという場で引き受ける

POINT

私たちが「サッカーという場で引き受ける」と考えているのは、ご家庭だけに任せるのではなく、一緒に子どもの成長を支えたいからです。

そこで私たちが考えているのが、「ご家庭で抱え込んでいる役割の一部を、サッカーという場で引き受ける」ということです。

親としての私が家の中ではできないこと。それを、コーチとしての私はサッカースクールという場でならできると思っていますし、これまでも現場で行ってきました。

サッカーは、子どもたちが好きで取り組んでいるものです。そして、失敗しても命に関わることはありません。ボールを失っても、シュートを外しても、ケガにさえ気をつければ大丈夫です。だからこそ、サッカーは安心して失敗できる場所になります。

さらに、サッカーにはもう一つ大きな強みがあります。それは、子どもたち自身が「好き」で取り組んでいることです。

人は本来、好きなことに対しては自ら考え、工夫し、挑戦しようとします。

好きだから挑戦できる。好きだから失敗できる。好きだから、もう一度考えられる。

私たちは、サッカーを単なる技術習得の場ではなく、自分で考える力を育てる教材として捉えています。

子どもたちが好きなことの中で、たくさん失敗し、自分で考え、また挑戦する。その経験を、私たちが責任を持って見守る。

ご家庭では難しい「失敗を待つ」という関わりを、私たちが引き受ける。そう考えていただけたらと思っています。

おわりに

ご家庭だけで、すべてを抱える必要はありません。

子どもたちは、好きなことの中でこそ、たくさん考え、挑戦し、成長していきます。私たちもサッカーという場を通じて、その成長を支えていきたいと思っています。

安心して失敗できる場所で、たくさん挑戦し、自分で考える。サッカーで培った「自分で考える力」が、いつかサッカーを越えて、子どもたちの人生を支える力になると考えています。

そしてご家庭でも、余裕のある時に少しだけ、「答えを教える」ではなく「問いかける」を意識していただけたら幸いです。


まとめ

この記事のまとめ

子どもが自分で考えて行動できるようになるためには、まず考えるための知識や経験という「材料」が必要です。

そして、理解したことを実際に試し、失敗し、その失敗から学ぶ経験を積み重ねることで、本当の意味での学びが定着していきます。

その過程では、知識や原理原則を伝えるティーチングと、自分で考える機会を与えるコーチングの両方が欠かせません。

また、主体性を育てるためには、自律性・有能感・関係性という環境づくりも重要です。

私たちはサッカーを単なる技術習得の場ではなく、自分で考え、挑戦し、成長する力を育てる教材だと考えています。

サッカーで培った「自分で考える力」が、将来サッカー以外の人生の場面でも活きる力になることを願っています。

FAQ

よくある質問

Q

子どもが失敗ばかりします。どうすればいいですか?

A

失敗は成長の過程です。まずは失敗の原因を一緒に考えることが大切です。

Q

主体性を育てるにはどうすればいいですか?

A

知識を教えるティーチングと、考える機会を与えるコーチングの両方が必要です。

Q

サッカーは主体性を育てるのに向いていますか?

A

サッカーは自分で判断し続けるスポーツであり、主体性を育てる教材として非常に優れています。

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